千房輝の写真は、ほんとうのアフリカが見られるという意味でとても印象的だ。
伝統的なダンスや音楽の美。
着ている服は確かに貧しいけれど、なんだか太陽を象徴しているような子供の表情。
アフリカというと、人は病気や飢餓や戦争などの不幸を思い起こすけれど、人々が歓びに輝いている。
ほんとうのアフリカの姿がこの写真集にはよく写し出されていると思う。
都市を見てもアフリカは見えてこない。
アフリカは、村の生活にある。
農作業や染め物といった仕事をする村人たちの伝統的な姿の美しさ、魚をとり、洗濯をする女たちの美しさ、着ているものや表情、そしてアフリカ人特有の体の線の美しさもよく表現されている。
わたしたちは歌って踊って演奏して、コンサートに来てくれる人たちとコミュニケーションをとり、アフリカの文化を伝えている。
千房の写真を見ていると、それと同じ仕事をしているように思える。
つまり、わたしたちがアフリカについて伝えたいことを千房は彼の写真を通じて伝えようとしている。
アフリカについていろいろなニュースが聞こえてくるけれど、世の中の人々が千房の仕事をよく見てくれれば、アフリカが、人々が、あたたかい心を持ち、働き者がたくさんいる素晴らしい大陸であることがわかると思う。
アフリカン パーカッショニスト ママディ・ケイタ / mamady keita
以前にアフリカ・ツアーをした時に、そこに限りなく存在する歴史的表現物には圧倒された。
あらゆる文化の始まりはここにあると思わせるほどだった。
と同時に、現在進行する重苦しい状況も色々と知らされた。
巨大なアフリカのどこをどう切り取って見せるのか、それがまず大事なことになる。
この写真集からは、今までのアフリカ写真のイメージとは少し違う不思議な透明感が伝わってくる。
撮られている人物たちがまるで立ち位置まで演出されたようなあざやかな芸術的ショットもある。
すべて自然な経過だったということだが、ミュージシャンでもある登場人物が、心ゆくまで自分たちを表現しようとしているからにちがいない。
信頼関係が手に取るように分かる。
千房さんはかつて聞いたタモリの「ソバヤソバヤ」を契機に、ずっとアフリカ音楽を自らも実践しているという。
その明るいミュージシャンシップのおかげで、画面からかけがえのないリズムを共有する心があふれてくる。
ジャズ・ピアニスト 山下 洋輔